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2018年05月

映画『タクシー運転手ー約束は海を越えて』をみんなで見た

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予告編動画 ↓


 『タクシー運転手ー約束は海を越えて』をジグザグ会の数人で見てきました。ここでは3人の感想を紹介します。ぜひお読みください。その上で映画に関心をもっていただくきっかけになれば幸いです。


 本作は1980年のいわゆる「光州事件」を題材に、実話を元にした商業映画で、韓国では1500万を動員する空前のヒット作となりました。映画の内容解説については3人の感想(特に大川さんの)を読んでください。

 先に同じ光州事件を取り上げた『光州5・18』では、いわばその内部から悲劇の真実を描いていますが、本作では当時の背景情勢や政治的主張などは全く描かれず、外の人間(主人公)が見たまんま、ごく普通の人としてのふれあいを、時に笑いをまじえて描いていきます。さらに主人公は戒厳令に反対する学生のデモを「迷惑」と言うような、時代背景を考えれば「普通」を通り越していささか鈍感すぎるくらいの陽気でいい加減な男です。

 しかしそんな一介のタクシー運転手の勇気によって、覆い隠されていた光州での事態、その映像などが、全世界に伝えられたのです。「外の人間」としての目線、主義主張ではない人として当たり前のふれあい、そして私たちと変わらないごく普通の人々の勇気によって引き起こされた奇跡。

 特に感想を寄せてくださった3人とって「光州事件」は、少年~青年時代に、日本のすぐ隣でおこったショッキングな事件であり、その後の人生に影響を与えた事件でもあります。あの当時「英雄的」とさえ思っていた行動が、今現在の自分と何ら変わらない普通の人たちの勇気によって担われていたこと、およびもつかない思想ではなく、充分に理解できる当たり前の行動だったこと。それは再度事件を自分たちに引きつけ、新しい意味を私たちに与えてくれるものです。

4月21日より全国にて順次公開中。

「タクシー運転手」~約束は海を越えて~ 公式サイト

http://klockworx-asia.com/taxi-driver/

映画『タクシー運転手』を見て(1)by 中杉通

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ラストシーンが30年前の私につながった
同じタクシー運転手として

映画『タクシー運転手』

 私は東京のタクシー運転手である。タクシー運転手は、個人主義だ。誰も教えてくれないし、助けてもくれないし、収入はそれぞれの腕と経験と「運」だ。こうすれば稼げるというマニュアルがあってもアテにはならない。すべて自分次第。

 100,000ウォンの大金に目が眩んで、同業の危険な上客を横取りした主人公の、それが「運」だったのだろう。ソウルでこつこつと営業してたら、彼は生涯にわたり、闘う同胞の英雄的な生きざまを知ることもなく、自分以外の誰かや何かのために、自分が命を懸ける瞬間とも無縁だったに違いない。

映画『タクシー運転手』を見て(2)by 大川ふとし

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ごく普通の人の小さな決心の積み重ねが明日を創る
「私」が「私たち」になる瞬間

映画『タクシー運転手』

 劇場内は夕方前にもかかわらず満席だ。20代から70代までの年齢層がまんべんなく押し寄せている。大手新聞に紹介されたこと、また、韓国の人気監督、人気俳優による作品であることもあるのだろうが、極めて政治的な題材を扱った作品であるにも関わらず、この盛況ぶりには目を見開いた。韓国では1,200万人動員突破の大ヒット作である。

 その題材とは、1980年5月、韓国・光州民衆蜂起、軍による弾圧・虐殺である。公式な発表でも死者154名、行方不明者70名という陰惨なものだ(5.18記念財団による保証金支給者)。本作は外国人記者と彼を乗せたタクシー運転手の実話から構成したものである。

映画『タクシー運転手』を見て(3)by まっぺん

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「光州事件」に巻き込まれた市民の目線から描く
これは見ないと絶対に後悔する映画だ!

taxi03
 5月3日、錦糸町の楽天地シネマで彼女と韓国映画『タクシー運転手』を観てきました。
 最終日のはずでしたが期間が延長され、10日までは観られるようです。20時20分の最終回をみました。編集の仕事の〆切が心配でしたが、無理しても観て来てよかった。

 これは実話を題材に構成された作品。当時の光州の様子が実にリアルで、あのハードアクション感は本物だと感じさせます。最後のカーチェイスや、その前の検問で逃してやる兵士のシーン等は「こうあってほしい」という観客の願望に応えるフィクションでしょうが、それが作品に痛快さを演出し、娯楽作品としての味を出しています。

 作品の中心を貫くテーマは紛れもない本物。特に、主人公のタクシー運転手が、普通の庶民が持つ意識から、躊躇しながらだんだんと変貌をとげて行く姿に我々は感動する。これはあの光州事件を題材としていますが、それを政治的観点から俯瞰して描いているのではなく、市民の目線からとらえています。だから「政治的映画」とは言えない。娯楽映画、あるいはアクション映画でしょうか。ストーリー解説などは他の方に任せますが、何度も泣いてしまう映画です。オススメの作品。観なかったらきっと後悔します。

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